タンポポの綿毛(冠毛)を顕微鏡観察しましょう。
まずは低倍率で綿毛の全体像を観察します。黒い紙の上に綿毛を置き、上から光を照射しながら実体顕微鏡で観察したのがこちら。
綿毛の部分をよくみると、傘の骨組みのように放射状に太い毛が広がっていて、そこから細い毛が枝のように伸びているのがわかります。
傘の骨組みの形は、ちょうど強風で裏返った時のように逆さまですね。
視点を変えて今度は下側(種側)からも覗いてみましょう。
細かな毛が枝のように伸びているのがよくわかりますね。
生物顕微鏡を用いてもう少し高倍率で観察してみましょう。
綿毛をスライドガラスの上にのせ、水を1滴たらしてからカバーガラスをかぶせ100倍で観察したのがこちら。
傘の骨組みにあたる部分から出ている細い毛の形状は、長い糸状のものだけでなく、短くて尖った角(つの)のようなものもたくさんあることが観察でわかりました。
さらに倍率を上げてみましょう。
角のように見える尖った部分は細長い繊維から分岐していて、その細長い繊維が多数集まって“傘の骨組み”部分を構成しているように見えます。
1本1本の繊維は直径10μmにも満たない太さですが、繊維の中に横長のカプセルのようなものが多数見られ、その部分は中空になっているように見えます。
ひょっとしたらより遠くへ種を飛ばすために、中空にして軽量化を図っているのかもしれませんね。
中空化に伴う弊害として、繊維の強度低下が予想されますが、タンポポはそこも対策済みのようです。
上の1000倍で観察した写真からもわかるように、タンポポの綿毛は繊維を束ねた構造です。繊維どうしを何本も束ねることで補強しあい、軽量化と強度の両立を図ることができます。
さらに、綿毛の表面積に着目すると、タンポポの綿毛は細い繊維が束になっている分、通常よりも表面積が大きくなっています。また、綿毛表面の多数の角状突起も、表面積のさらなる増大に寄与しているといえるでしょう。
表面積が大きいと揚力が大きくなり、より長時間空中を浮遊できるようになります。
また、綿毛表面のギザギザの観察結果から、タンポポの綿毛は空中を飛ぶだけでなく、ギザギザによって人や動物に付着し、遠くに運ばれやすくする働きがあるのではないかと思います。
このように、タンポポの綿毛には種をより遠くに飛ばすため、さまざまな工夫がなされていることを確認できました。
タンポポの綿毛の顕微鏡観察を通して、さまざまなことを想起し、改めて大自然の偉大さを感じるきっかけになりました。
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