キウイフルーツの果肉を顕微鏡観察

身近なもの

キウイフルーツの果肉を顕微鏡観察してみましょう。

まず、キウイフルーツの果肉を採取します。

今回は比較のため、A:皮の近傍、B:種子周辺、C:AとBの中間部分、(おまけで真ん中の白い部分)の計4か所から果肉を採取しました。

スライドガラス上にキウイの果肉の小片(約2‐3mm角程度)をのせ、カバーガラスをかけて上からゆっくりと圧をかけ果肉を押しつぶします。(圧をかけすぎるとカバーガラスが割れてけがをするので注意!)

早速顕微鏡観察で確認しましょう。まずは、A.皮の近傍から。低倍率(60倍)で観察します。

キウイフルーツの果肉・果皮近傍(60倍)

果肉の中の所々に黒っぽい影のようなものを確認できます。

透過光による観察では、光を透過しにくいものは黒っぽく見えます。黒っぽく見えると色がわかりにくいので、今度は暗視野照明を用いて観察します↓

キウイフルーツの果肉・果皮近傍(60倍)暗視野照明

写真左上の黄緑色の部分はキウイの皮です。黒っぽく見えていた物体は、黒色ではなく白色~透明のようです。もう少し倍率を上げて観察しましょう。

キウイフルーツの果肉・果皮近傍(150倍)暗視野照明法

白い固まりの両端がギザギザしているように見えます。

キウイフルーツの果肉・果皮近傍(150倍)暗視野照明法

さらに拡大してみましょう。

キウイフルーツの果肉・果皮近傍(600倍)

ギザギザの正体は、針状結晶の束の先端部です。先端は非常に鋭利な形状をしています。

この形状には見覚えがあり、以前ヤマイモの顕微鏡観察でも見かけた、シュウ酸カルシウムの針状結晶の束と思われます。

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次に、B.種子周辺 を観察してみましょう。まずは低倍率(60倍)から。

キウイフルーツの果肉・種子周辺(60倍)

黒っぽい影(シュウ酸カルシウムの針状結晶の束)をいたるところで確認できます。針状結晶の束の数は、皮近傍(A)よりも種子周辺(B)のほうが多いことがわかります。

こちらも暗視野照明を用いて観察してみましょう。

キウイフルーツの果肉・種子周辺(60倍)暗視野照明法

視野右下の針状結晶の束が少しばらけているように見えます。さらに倍率を上げて観察してみましょう。

キウイフルーツの果肉・種子周辺(150倍)

針状の結晶がばらけている様子をはっきり確認することができます。

キウイフルーツの果肉・種子周辺(150倍)暗視野照明法

 

次に、AとBの中間部分(C)についても顕微鏡観察で確認してみます。

キウイフルーツの果肉・中間部分(60倍)

こちらも種子周辺(B)ほどの数はありませんが、針状結晶を確認できます。

150倍まで倍率を上げてみましょう。

キウイフルーツの果肉・中間部分(150倍)

こうやって見るとキウイフルーツいは、ものすごい数の針状結晶が含まれているんですね。

 

おまけ:真ん中の白い部分

キウイフルーツの果肉・真ん中の白い部分(60倍)

面白いことに、真ん中の白い部分にもシュウ酸が含まれていました。

キウイフルーツの果肉・真ん中の白い部分(150倍)

それにしても、ものすごい数の針状結晶の束ですね。私は25年以上色々な生物模倣材料の合成研究を続けてきましたが、この両端が尖った針状結晶の束を人工的に合成できていません。ただただ自然の偉大さに驚かされるばかりです。

キウイフルーツの果肉・真ん中の白い部分(600倍)

今回、キウイフルーツの果肉を部位ごとに4か所観察しましたが、すべての部分でシュウ酸カルシウムと思しき両端が尖った針状結晶の束を確認することができました。

4か所のうち、針状結晶の束の数は種子周辺が一番多かったです。キウイも、次の世代につなぐ「種子」を虫から守ろうとしているのでしょうね。

 

【参考文献】

1)シュウ酸カルシウム針状結晶とプロテアーゼとの劇的な相乗的殺虫効果を発見(独立行政法人 農業生物資源研究所)2024年7月28日閲覧

シュウ酸カルシウム針状結晶とプロテアーゼとの劇的な相乗的殺虫効果を発見

2)今野 浩太郎:“植物は毒針で昆虫を撃退する?シュウ酸カルシウム針状結晶とシステインプロテアーゼの劇的な相乗的殺虫効果” 化学と生物 54 (11), 847-852, 2016

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