髪の毛のキューティクルを顕微鏡観察

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髪の毛のキューティクルを顕微鏡観察しましょう。

キューティクルを顕微鏡観察するときは、髪の毛の表面の凹凸がはっきりとわかるように、金属顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)などを使います。しかしながらこれらの機器を個人で揃えるのは大変なので、今回も一般の方が入手容易な生物顕微鏡(Swift SW380T)を用いた観察にトライしてみます。

落射光を用いたキューティクルの顕微鏡観察

まずはじめに、金属顕微鏡のような使い方になりますが落射光で観察してみましょう。一般的な生物顕微鏡には落射光の照射装置がついていないため、100円ショップで販売しているLED懐中電灯を落射光の照明代わりに使っています。

なお、生物顕微鏡は透過光での観察を想定した光学設計がなされているので、今回の落射観察では対物レンズの性能を十分発揮することができていません。あくまで実験的な試みで、本来の使い方ではないことをご承知おきください。

では早速落射光で観察してみましょう。髪の毛を1cm程度にカットして、スライドガラスにのせ、カバーガラスをかけずにそのまま観察しました。

照明の光は、LED懐中電灯を100均のフレキシブルスマホスタンドで固定し、髪の毛の斜め上から照射しています。

100倍で観察したのがこちら。

髪の毛のキューティクル(100倍)落射光で観察

かろうじてキューティクルらしき凹凸がみえます。さらに250倍まで拡大してみましょう。

髪の毛のキューティクル(250倍)

うろこ状のキューティクルが髪の毛の表面に幾重にも重なっているのが見えました。

このように本来持つ顕微鏡の性能よりは若干落ちますが、照明を工夫することで金属顕微鏡のようにキューティクルの状態を観察することが可能です。

次に、透過光を用いて観察してみましょう。

透過光を用いたキューティクルの顕微鏡観察

髪の毛を1cm程度にカットして、スライドガラスにのせ、カバーガラスをかけて透過光をあてて観察したのがこちら。

髪の毛のキューティクル(100倍)透過光で観察

髪の毛が黒く、光が透過しないためキューティクルの構造が良く見えません。

髪の毛の薄片を作成することができれば、透過像でもキューティクルが見やすくなると思いますが、サンプル作成の難易度は高いです。

ブリーチした髪の毛か、白髪なら透過光がサンプル内部を通りやすいのでうまく観察できるかもしれません。

スンプ法による髪の毛のキューティクル(レプリカ)の観察

透過で観察しにくいサンプルの凹凸形状を確認するために、一旦サンプルのレプリカを透明樹脂で作ってから、そのレプリカを透過で観察する方法があります。

この観察手法はスンプ法(Suzuki’s Universal Micro-Printing method)といって、1930年にグンゼ製紙(現:グンゼ株式会社)の技師であった鈴木純一氏によって開発されました。

90年以上も前に開発されたスンプ法では、スンプ板と呼ばれるセルロイドの板をスンプ液と呼ばれる有機溶剤で柔らかくして、そこにサンプルを押し付けて型をとっていましたが、今は「接着剤」や「液体ばんそうこう」などが容易に入手できるので、それらを使えば当時よりも簡単に型をとることができます

ではやってみましょう。

1)スライドガラス上に液体ばんそうこうをうすく塗ります。

2)すぐに(乾かないうちに)髪の毛を 1)の上に乗せ、かるく押さえて型をとります。

3)しばらくすると、液体ばんそうこうが固まるので、髪の毛をゆっくりと剝がします。

とても簡単。ものの5分もかからずにサンプル作成が完了しました。
まずは100倍で観察したのがこちら。

ちょうどよい具合に髪の毛のあとがついています。
細部を見るために、徐々に倍率を上げていきましょう。

髪の毛のキューティクル(250倍)スンプ法による転写像

キューティクルのうろこ状の模様が見えてきました。1000倍まで拡大してみます。

髪の毛のキューティクル(1000倍)スンプ法による転写像

液体ばんそうこうに髪の毛のキューティクルの凹凸形状が細部まで精密に「転写」されているのが確認できますね!

わたしは手軽さから、スンプ法によるサンプル作製には刷毛付きの液体ばんそうこうを愛用していますが、接着剤や液体ばんそうこうの種類を変えていろいろ試してみるのも面白いかもしれません。

非常に簡単にできますので、髪の毛以外もいろいろ「転写」されてみてはどうでしょうか。

 

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