タマネギの根の細胞分裂(体細胞分裂)を観察しましょう。
観察にはサンプルの前準備が必要なため、その方法も併せて紹介していきます。
観察前準備
準備1 タマネギの根を採取
タマネギの根の採取方法ですが、以下の方法があります。
(1)タマネギの水栽培により根を成長させ、採取
(2)タマネギの種子を発芽させて採取
今回は (2)タマネギの種子を発芽させ、根を採取しました。タマネギの種子は100円ショップなどで入手可能です。
シャーレ(なければ小皿やタッパー)にガーゼ等を敷き、タマネギの種をまいて水をかけ、アルミホイルをかぶせて15~20℃の暗所で保管します。時々乾かないように水やりをしていると、4~5日で発芽します。
準備2 細胞組織を固定
発芽した種子をファーマ液(エタノール:酢酸=3:1の混合液)で固定します。固定とは、細胞を腐敗や劣化から守り、構造が壊れていくのを防ぐ作業です。固定を行うことで生体に近い状態での長時間観察が可能になります。また、固定を十分行うことで長期保管も可能です。
ちなみに、今回の観察では昨秋に発芽させ、固定処理したサンプルを用いました。保存液(70%エタノール)中で保管することで長期保存後も問題なく観察できています。
準備3 解離処理
タマネギの根を60℃に加温した希塩酸(1N HCl)に5分間浸漬し、解離処理を行います。
解離処理によって、細胞壁と細胞壁を接着しているペクチンという物質を分解し、細胞がひとつひとつにバラけてほぐれやすくなります。
準備4 染色処理
解離処理を行ったタマネギの根を、染色液で染色します。染色液には通常、細胞の核や染色体を染める、アセトカーミン(酢酸カーミン)や酢酸オルセイン、酢酸ダーリアが用いられます。
(今回は酢酸ダーリアを使用)
タマネギの根を酢酸ダーリア溶液に10分程度浸漬、その後酢酸水溶液で余分な染色液をよく洗い流します。
準備5 おしつぶし
スライドガラス上に染色後のタマネギの根をのせ、カッターナイフで根の先端から2~3mm位の所を切り取り、先端部分だけスライドガラス上に残します。
余分な水分をろ紙(なければキッチンペーパー)で吸い取り、その後グリセリンを1滴たらし、カバーガラスをかけます。
カバーガラスの上にろ紙(キッチンペーパー)をかぶせ、その上から圧力をかけて根の先端部分をおしつぶします。
写真のように、つまようじの頭でグリグリ押し付けてほぐしてもよいでしょう。
(ガラスを割って手を怪我しないように注意しましょう)
おしつぶすことで、根の先端の細胞の重なっている部分がほぐれて一層に並び、顕微鏡で観察しやすくなります。
観察結果
最初は低倍率から観察していきます。
根の先端部分の細胞は、根元部分に比べて全体的に細胞のサイズが小さいことがわかります。
なぜこのような大きさの差が生じるのかというと、根の先端部分の細胞は細胞分裂が盛んなため、若い細胞が多くまだ成長が進んでいないからです。
逆に根元部分の細胞は細胞分裂してから時間が経っているため成長が進んでおり細胞のサイズが大きくなっています。
では、根の先端部分が本当に細胞分裂が盛んなのか、細胞の様子を詳しく観察してみましょう。
まず、250倍くらいでそれぞれの細胞の核の様子を観察します。
核の大きさが通常よりも大きくなっていたり(分裂前期)、糸状のものが見つかれば(同 中期~後期)、さらに倍率を上げて詳しく観察してみます。
上の写真では、視野の真ん中あたりに分裂後期の細胞が確認できます。その隣(右下)の細胞は分裂前期でしょうか。
↑こちらは分裂中期です。
タマネギの根の根元部分では、細胞分裂はほとんど見られませんでしたが、
タマネギの根の先端部分は至る所で細胞分裂が見られ、比較的細胞分裂が盛んであることを顕微鏡観察で確認できました。
この結果を受けて、タマネギ以外の根でもこのような細胞分裂が確認できるか、また、根の先端部以外の組織でも細胞分裂の盛んな部位があるのか、確認してみるのも面白いですね。
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