インスタントコーヒーの粉末を顕微鏡観察してみましょう。
私が普段飲んでいるスティックコーヒー2種類(カフェインレス、モカブレンド)の粉末をスパチュラで採取、スライドガラスの上にそっとのせます。
(スライドガラスにのせた時点で粉末のサイズが大きく異なっていることがわかります。顕微鏡でさらに詳しく観察してみましょう!)
粉末が飛び散らないようにそっとカバーガラスをかけ、60倍で観察したのがこちら。
まずはカフェインレス
スライドガラスにのせた時点で細かい粉末でしたが、顕微鏡で拡大すると粉末は丸みを帯びた形状をしていることがわかります。
観察場所を変えてみると、丸みを帯びた粉末の中には、互いにくっつきあっている(凝集している)ものや、ほぼ真球状のものなどが含まれていることがわかりました。
つぎに、モカブレンドです。
肉眼ではモカブレンドの粉末は数mmの塊に見えましたが、顕微鏡で見るとどうなっているでしょうか。こちらも60倍で観察してみましょう。
数mmの大きな塊も、拡大すると細かな粒子の集まりのように見えます。もう少し倍率を上げてみましょう。
左下のスケールバー(100μm)と比べると、それよりもずっと小さな微粒子の集合体であることがわかります。微粒子の集まりの中に、所々黒く見える箇所がありますが、この部分は空隙のようです。
モカブレンドの粉は、粉のサイズが数mmと大きくても微視的には微粒子の集合体で隙間があり、水(お湯)を加えるとその隙間に水(お湯)が入り込んでサッと溶けるのでしょうね。
ちなみに、今回観察したカフェインレスの粉とモカブレンドの粉で、見た目のサイズや顕微鏡の観察結果が大きく異なるのは、コーヒーを粉にする際の製法が異なるからだと推察しています(実際に製造している所を見たわけではないのであくまで推測ですが)。すなわち、今回のカフェインレスの粉は噴霧乾燥法(スプレードライ法)で作られ、モカブレンドの粉は凍結乾燥法(フリーズドライ法)で作られているのだと思われます。
噴霧乾燥法は、コーヒーの液体をスプレーで高温の気流中に噴霧し、瞬時に乾燥させて粉末にしますが、粉末の形状はスプレーの液滴の形を反映して球状のものが多いです。また、球状の液滴が乾燥する過程で中空状になったり、液滴同士がくっついて凝集体になったり、球が割れたような形状の粉末が含まれているのも特徴です。
一方、凍結乾燥法はコーヒーの液体を凍らせ、真空(減圧)状態にすることで水分を飛ばして(昇華させて)粉末を得ます。この製法では見かけの粉末のサイズは大きくなりがちですが、微細な構造を観察すると微粒子の集合体で、水が(凍結乾燥によって)抜けた部分は空隙になってスカスカになっているのが特徴です。
噴霧乾燥法(スプレードライ法)や凍結乾燥法(フリーズドライ法)は、今回のインスタントコーヒー以外にも粉末スープなどの食品製造に使われているので、いちど身近な粉末状の食品を顕微鏡観察してみるのも面白いかもしれませんね。
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