読者の方から、「万年筆のインクや食用色素(食紅)を染色液として利用できますか?」との質問がありました。
口頭でお答えするよりも実際に見ていただいたほうが良いと思い、早速タマネギの薄皮をモデルサンプルに、手持ちのインクや食用色素で試してみました。
今回検討したのは、次の7種類。
万年筆インク
- ペリカン4001 ブルーブラック
- パイロット ブルーブラックインク
食用色素
- 食用色素 赤色(McCormick)
- 食用色素 黄色(同上)
- 食用色素 緑色(同上)
- 食用色素 青色(同上)
色素を薄い酢酸水溶液(お酢)に溶かしたものを染色液として、タマネギのりん葉の表皮細胞(薄皮)を浸漬、染色しました(下の写真参照)。
食紅とお酢でタマネギを浸漬するなんて、まるでタマネギの酢漬けですね(笑)
5分後、タマネギの薄皮に付着した余分な染色液を水道水(流水)で洗い流し、再度スライドガラスに乗せ、カバーガラスをかぶせて150倍~で観察しました。
無染色サンプル
まず最初に比較のため、染色前のサンプルを観察。細胞内にある核はほぼ無色透明で、あまりはっきりと見えません。
ペリカン4001 ブルーブラック
万年筆インクの定番であるペリカン社の4001番。100年以上前から生産されている古典的インクです。150倍で観察。核がしっかりと染まっているのがわかります。予想以上にタマネギの核への染色力が強く、写真中央付近の核は染まりすぎているようです。
適度な染まり具合の核をみつけて、さらに高倍率(600倍)で観察してみました。
細かな部分も染色されているみたいで、染色液の代用として使えそうです。
パイロット ブルーブラック
150倍で観察。(水洗が甘かったからか)タマネギの表皮細胞のところどころに青いインクが残っていますが、核は染まっていないようです。入手しやすく、万年筆に使うと発色が綺麗でお気に入りのインクなのですが、今回の条件ではタマネギの核を染めることができませんでした。
次に食用色素の観察結果も見てみましょう。
食用色素 赤色(McCormick)
核が赤色に染まっています。ペリカン4001同様、染色液として使えそうですね。
食品に使える色素なので比較的安全性が高く扱いやすいです。
600倍↓
食用色素 黄色(McCormick)
ところどころ黄色色素の凝集物と思しき黒い塊が付着していますが、核は染まっています。あらかじめフィルター等で凝集物を取り除いておけば、染色液として使えそうです。
↓600倍
食用色素 緑色(McCormick)
赤色や黄色のように核がくっきりと見えません。今回の条件ではタマネギの核を染めることができませんでした。
食用色素 青色(McCormick)
こちらもあまりくっきりと核は見えません。(緑色よりはマシですが…)
今回観察した範囲では、
- 万年筆インク ペリカン4001 ブルーブラック色
- 食用色素 McCormick(マコーミック) 赤色、黄色
が染色液として代用できそうです。
万年筆のインクや食用色素は比較的安価で入手が容易なので、(酢酸オルセインのような)顕微鏡用の染色液の入手が難しい方は、ぜひこちらの方法を試されてはいかがでしょうか。
今回うまく染色できなかったインクや食用色素でも、対象物や染色条件を変えることで染まるようになるかもしれません。機会があればまた検討してみたいと思います。
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