顕微鏡の種類と特徴、代表的メーカー

顕微鏡の基礎知識

顕微鏡の種類と特徴、代表的なメーカーについて紹介します。

光学顕微鏡 Optical Microscope(OM)

一般の方にとっていちばん身近な存在なのがこの光学顕微鏡でしょう。小学校や中学、高校の理科の時間に習うのも光学顕微鏡です。

光学顕微鏡は、サンプルに可視光(目に見える波長域の光)を当て、サンプルを透過した光もしくは反射した光をレンズで拡大することで、微細なサンプルの内部構造や形態を拡大して観察する装置です。

金属顕微鏡

 

出典: 八洲光学工業 金属顕微鏡TMR-1 http://www.microscope.co.jp/

サンプルに光を当て、反射光を観察します。光を透過しない金属などの不透明なサンプルの観察に最適です。倍率は最大で2,000倍程度。

代表的な金属顕微鏡メーカー:八洲光学、カールツァイス、メイジテクノ

実体顕微鏡

出典:オリンパス 実体顕微鏡SZX16 https://www.olympus-lifescience.com/ja/microscopes/stereo/szx16/

実体顕微鏡は右目と左目の光路が分かれており、立体的な観察が可能です。また、対物レンズとサンプルステージまでの距離が一般的な金属顕微鏡より長いため、電子部品の修理や生物の解剖といったような、サンプルを観察しながら作業する場合にも実体顕微鏡が適しています。

反射光を観察する機種が多いなか、上記SZX16のように透過光源を備えた機種も販売されています。

実体顕微鏡は、金属顕微鏡や生物顕微鏡に比べて倍率が低めで、40~100倍程度となっています。

代表的な実体顕微鏡メーカー:オリンパス、ニコン

 

生物顕微鏡

出展:オリンパス システム生物顕微鏡BX43 https://www.olympus-lifescience.com/ja/microscopes/upright/bx43/

サンプルに光を当て、透過した光を観察します。細胞や薄片化処理した組織、薄膜などの内部構造を観察するのに適しています。

生物顕微鏡は、医療、バイオ、食品、エレクトロニクス等、様々な分野の研究開発用途で用いられています。

より良い観察像を得るために顕微鏡本体やレンズ、照明装置の最適化を含めた様々な観察手法が開発されており、一般的な明視野観察法以外にも暗視野観察法、位相差観察法、微分干渉法、蛍光観察法などが実用化されています。

代表的な生物顕微鏡メーカー:オリンパス、ニコン、メイジテクノ、島津理化

 

デジタルマイクロスコープ(CCD顕微鏡)

出展:キーエンス デジタルマイクロスコープVHX-8000 https://www.keyence.co.jp/products/microscope/digital-microscope/vhx-8000/index_pr.jsp

光学顕微鏡の接眼部分に撮像素子のCMOSやCCDカメラを搭載し、ディスプレイに観察像を投影して観察、記録、計測する顕微鏡システム。

CMOSが搭載されていても特に区別されず通称でCCD顕微鏡といわれています。

生物顕微鏡や金属顕微鏡に撮像素子を接続しモニターで観察できるものも、広義ではデジタルマイクロスコープといえます。

上記VHX-8000のように計測機能が充実している機種も多く、研究開発だけでなく生産現場での工程管理等でも使用されています。

代表的なデジタルマイクロスコープメーカー:キーエンス、オリンパス

電子顕微鏡 Electron Microscope(EM)

電子顕微鏡は可視光の代わりに電子線をサンプルに照射し、サンプルから出てくる電子線や透過する電子線によって得られる像を観察します。

電子線の波長は可視光よりも格段に短いため、電子顕微鏡は光学顕微鏡よりも解像度の高い観察が可能となります。

光学顕微鏡の場合、光を曲げるのにレンズを使用しますが、電子顕微鏡の場合はレンズの代わりに磁石(電磁石や永久磁石)による磁場を用いて電子線を曲げています。

走査型電子顕微鏡 Scanning Electron Microscope(SEM)

出典:日本電子 電解放出型走査電子顕微鏡JSM-IT800 https://www.jeol.co.jp/products/detail/JSM-IT800.html

細く絞った電子線ビームを真空中でサンプル表面に照射しながらスキャン(走査)すると、電子線ビームが当たったところから反射電子や二次電子、特性X線などが放出されます。

サンプルから出てくる電子線の種類や強さ、X線の情報(信号)を検出器で検出して、モニタ-上にスキャンしたサンプル表面の拡大像を表示、観察します。

SEMでは、サンプル表面の微細な凹凸形状(主に二次電子の情報)や、場所ごとの組成の違い(主に反射電子の情報)を知ることができます。

また、X線検出器を装備することで、サンプル表面のどの場所にどんな種類の元素が分布しているかを分析することができます。

SEMの中でもFE-SEM(電解放出型走査電子顕微鏡 Field Emission-Scanning Electron Microscope)と呼ばれるタイプの電子顕微鏡は、通常のSEMよりも電子ビームを細く絞ることができるため、より高解像度な観察が可能です。

代表的な走査型電子顕微鏡メーカー:日本電子、日立ハイテク

透過型電子顕微鏡 Transmission Electron Microscope(TEM)

出典:日本電子 電界放出形透過電子顕微鏡JEM-2200FS https://www.jeol.co.jp/products/detail/JEM-2200FS.html

光学顕微鏡(生物顕微鏡)では、サンプルを透過した光をレンズで屈折して拡大像を得ますが、TEMも生物顕微鏡と基本原理はほぼ同じで、可視光の代わりに電子線を用い、レンズの代わりに電磁石コイルによる磁場を用います。

電子線を飛びやすくするための高真空設備や、高解像度を得るための高圧電源設備など、生物顕微鏡と比べて大掛かりな設備が必要ですが、生物顕微鏡では決して得ることのできない高解像度の観察像が得られます。

一般的に光学顕微鏡の分解能は150nm程度といわれていますが、TEMの分解能は0.1nm以下と非常に高く、観察条件によっては原子一つ一つが識別可能となります。

代表的な透過型電子顕微鏡メーカー:日本電子、日立ハイテク

走査型透過電子顕微鏡 Scanning Transmission Electron Microscope(STEM)

出典:日立ハイテク 電解放出型透過電子顕微鏡HF5000 https://www.hitachi-hightech.com/jp/science/products/microscopes/electron-microscope/tem/hf5000.html

STEMは細く絞った電子ビームをサンプルにスキャンして照射することで、それぞれの位置で得られる透過電子の情報を検出して透過像を得る顕微鏡観察方法です。

サンプルのそれぞれの位置で得られる透過電子の情報は、試料内部の形態のみならず、組成や結晶構造なども可視化できます。このため、TEMでは難しかった特定の極微小部位における組成や電子線回折による結晶構造解析が可能となっています。

観察像や分析場所の解像度は電子ビーム径に依存しますが、TEM同様、0.1nm以下の高解像度のSTEMも上市されています。

代表的な走査型透過電子顕微鏡メーカー:日立ハイテク、日本電子

 

 

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