柔軟剤に含まれるマイクロプラスチックを顕微鏡観察

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柔軟剤に含まれているマイクロプラスチックを顕微鏡観察してみましょう。

柔軟剤や洗剤の中には、香りの成分(香料)を閉じ込めるために、微小なプラスチックのカプセル(マイクロカプセル)を使用している商品があります。

香料をマイクロカプセルに入れることで、香料の放出速度を抑制し、洗濯後も香りを長続きさせることが可能になります。

このため、香りの良さや持続性をウリにした国内外の衣料用洗剤や柔軟剤の多くにマイクロカプセルが使用されてきました。

しかしながらマイクロカプセルにはこうした優れた機能性がある反面、微小なプラスチック(マイクロプラスチック)を素材として使用しているためにいくつかの問題を抱えています。

そのひとつが、プラスチックごみ問題です。

マイクロカプセルが入った洗剤や柔軟剤を用いて洗濯をすると、マイクロカプセルの多くがマイクロプラスチックごみとなって洗濯排水と一緒に下水として流され、河川や海洋がマイクロプラスチックまみれになって汚染されるのではないかと懸念されています。

マイクロカプセル由来のマイクロプラスチックはμmオーダーの極めて小さなプラスチックであるがゆえに下水処理施設で取り除きにくく、処理しきれていない可能性が指摘されているからです。

サイズが小さなプラスチックは表面積が大きいため、化学物質を吸着しやすく、プランクトンなどの微生物に食べられると食物連鎖での化学物質の濃縮が問題になってきます。

また海洋や河川だけでなく、大気への影響も懸念されています。衣類の繊維に付着したマイクロカプセルが衣類の着用中に摩擦等ではがれ、マイクロプラスチック粉じんとして空気中を漂う可能性もあります。

このため、欧州ではマイクロビーズを使用した製品を規制する動きも出ています。

最近は材料技術者によって自然に分解しやすい素材や、それを使ったマイクロカプセルが開発されるなど、より根本的な解決に向けた取り組みが始まっています。

 

前置きが長くなりましたが、実際に柔軟剤に含まれているマイクロビーズを顕微鏡観察してみましょう。

何年か前に購入したものの、香りが強すぎて数回かしか使っていない柔軟剤が管理人宅の洗濯スペースにあったので、それをほんの少しスライドガラス上に滴下します。(1滴だと多すぎるので、0.1滴位)

すぐにカバーガラスをかけて、低倍率→高倍率の順に観察します。

250倍で観察したのがこちら

柔軟剤中のマイクロプラスチック(マイクロカプセル)250倍

所々に丸い、球状の物体があるのがわかります。もう少し拡大してみましょう。

 

柔軟剤中のマイクロプラスチック(マイクロカプセル)1000倍

丸い物体がはっきりと確認できます。マイクロカプセルだと思われます。大きさはどれも10μm(0.01mm)以下と小さいです。

観察場所を変えても至る所で球状の粒子を確認できます。

今回観察したマイクロカプセルは、香料の徐放性付与が目的でしたが、カプセルの材質や中に入れる物質を変えることで、実にさまざまな分野に応用されています。

例えばほんの一例ですが、体内の特定の場所に薬剤を届けるDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)製剤であったり、ある温度になるとカプセルが溶けて顔料を放出する感熱色素(感熱紙)や示温性顔料などが挙げられます。

他にも身近なところでマイクロカプセルが使用されていないか、顕微鏡観察で確認してみても面白いでしょう。

 

 

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