中学校の理科で出てくる、ヒトの口腔粘膜上皮細胞(ほおの内側の細胞)を顕微鏡観察してみましょう。
ほおの内側の細胞は、新陳代謝によって絶えず剥がれ落ちて唾液中に混じっています。なので綿棒などでほおの内側をこすってやると、簡単に細胞が採取できます。
また、ほおの内側の細胞はうすく平べったい形をしており、薄片化などの面倒なサンプル加工処理なしに顕微鏡での透過観察ができるため、学校での教材によく用いられています。
では早速はじめましょう。
1)綿棒で頬の内側をかるくこすって細胞がまじっただ液(粘液)を採取します。
2)1)の綿棒をスライドガラス上にこすりつけながら採取した粘液を塗り広げます。
3)染色液(酢酸カーミンまたはメチレンブルー)を滴下し、数分間静置、ろ紙やキッチンペーパー等で余分な染色液を除去します。
4)カバーガラスをかけて、低倍率から観察を開始、徐々に倍率を上げていきます。
250倍で観察した頬の内側の細胞がこちら↓
薄く平べったい細胞で、一つ一つの細胞が独立しているように見えます。
メチレンブルーで染色したので核が青く染まってはっきりとみえます。(アセトカーミンで染色した場合は核が赤く染まります)
さらに1000倍まで倍率を上げてみましょう。
細胞の中の細かなところが見えてきました。
ほおの内側の細胞の周囲は、植物細胞に見られる厚い細胞壁は存在せず、薄い細胞膜のみで囲まれていることが確認できます。
また、細胞の中は核以外に、1μm~数μm(1μm=1/1000mm)の小さなつぶつぶ模様の「小器官」が数多く観察されます。
細胞を構成する器官としては、核以外にもミトコンドリアやゴルジ体、小胞体、リボソーム、リソソームなどがあることは教科書等で習います(した)が、この顕微鏡で見える「小器官」がどの器官に相当するのか、これだけでは確認できません。
ミトコンドリア(生細胞)についてはヤヌスグリーンやTTC溶液(トリフェニルテトラゾリウムクロライド溶液)で染色すれば確認することができるので、機会があれば今度やってみようと思います。
また、生物の教科書とかでは小胞体やリボソーム、リソソームは光学顕微鏡では見えないことになっていますが、
上記サイトにあるような蛍光標識(特定の器官にくっつく処理がなされた蛍光物質)を用いて細胞を染色し、(光学顕微鏡の一種である)蛍光顕微鏡で観察すれば従来光学顕微鏡では見えなかった器官を見ることができるようになってきています。
なお、この発明で2014年に3名の研究者がノーベル化学賞を受賞1)しています。
顕微鏡の観察技術も日々進化し続けており、これまで観察が不可能といわれていたことが新しい技術の組み合わせで可能になってきました。
観察方法を工夫しながら、新たな観察方法を発見、開発するのも、顕微鏡観察の醍醐味ですね。
次に蛍光イメージングのような新たな観察技術を開発し、科学技術の発展に大きく貢献するのはあなたかも知れません。
【参考文献】
1) ノーベル化学賞に超高解像顕微鏡の米独の3氏(2014.10.8)~科学技術振興機構 (JST)サイエンスポータル
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