みかんを暖かいところに長期間放置していたため、表面にカビが生えてしまいました。
放っておくと、他のみかんにもカビが生えてきますので、取り除きます。
そのまますぐ捨てるのは勿体ないので、せっかくですからカビを顕微鏡観察してみましょう(笑)。
まずはCCD顕微鏡でミカンの表面を観察します。
ミカンの表面にいくつものコロニー(集落)ができているのが分かります。カビの外側が白っぽく、内側が青緑っぽくなっています。これはアオカビの仲間、ペニシリウムだと思われます。
では、このカビを生物顕微鏡を使ってさらに詳しく観察してみましょう。
まず、とても簡単に観察する方法を紹介します。カビをセロハンテープにくっつけて、セロハンテープごと観察する方法です。
セロハンテープを1~2cmほどのサイズに切り、ピンセットを使って粘着面を軽くミカンのカビに押し当てます。
セロハンテープにくっついたカビを、セロハンテープごとスライドガラスの上に張り付けるとプレパラートの完成です。
とても簡単なので、子供の自由研究などにぴったりの観察手法です。
(但し、相手はカビですので、ポリ手袋やピンセット、マスク等を使用して、カビに直接触れない、カビの胞子を吸い込まないようにすることをおすすめします)
では顕微鏡で見ていきましょう。
まずは倍率100倍からです。
先ほどのCCD顕微鏡観察で見た、アオカビのコロニーがセロハンテープの粘着剤にうまくくっついているのがわかります。
100倍の観察像では小さな粒子状のものが無数に集まっているように見えますが、細かいところはわかりません。250倍に拡大してみましょう。
非常に小さい球状の物体の集まりであることが分かりました。カビの胞子です。
さらに倍率を上げて、1000倍で観察してみましょう。
カビの胞子は非常に細かいため、みかん表面だけに留まらず空気中を漂い、他のみかんや食べ物の表面にくっつきます。そして、食べ物に含まれる栄養分や水分に加えて適切な温度と空気中の酸素があれば、活発に生育し、コロニーを形成していきます。
カビの生えたみかんを放っておくと他のみかんにもカビがどんどん広がっていくのは、カビがこのような細かな胞子を周囲にまき散らしているからなのですね。
では、みかんの表面でカビはどのように生えているのでしょうか。
こんどはカビの生えている部分のみかんの皮を薄く削ぎ取って、プレパラートに乗せて観察しました。
コロニーから透明の菌糸が四方八方に広がっていて、コロニーどうしが菌糸でつながっているのがわかります。まるで都市どうしをつないでいる幹線道路のようです。
つぎに、コロニーを横から観察してみましょう。
菌糸の先端部に胞子がくっついているのが確認できます。
1000倍まで拡大してみましょう。
木の枝のように分かれた菌糸(分生子柄)の先には、いくつもの分生子形成細胞(フィアライド)がくっついています。
フィアライドの先端部分で、分生子と呼ばれる胞子が数珠つなぎに生み出されています。
ものすごい数の胞子がここで急速に生み出されているんでしょうね。
アオカビの中には、イタリアのゴルゴンゾーラやフランスのロックフォールといったブルーチーズに使われている種類もあるので、今度チーズを食べる機会があればそちらのアオカビも観察してみます!